多くの中小企業には、専任のCFO(最高財務責任者)がいません。経理担当者はいても、数字を「記録する」人と、数字を使って「経営を動かす」人は、役割がまったく違います。そして後者の不在は、静かに、しかし確実に経営の足を引っ張ります。
「うちにCFOなんて大げさだ」と感じるかもしれません。けれど、CFOが担うべき機能は、規模に関わらずどんな会社にも必要です。問題は「専任で雇うべきか」であって、「機能が要るかどうか」ではありません。
CFOがいない会社に出る、3つの症状
- 数字が遅い・粗い:月次決算が締まるのが遅く、意思決定の時点で「先月どうだったか」が分からない
- 資金繰りが場当たり的:資金繰り表がなく、「気づいたら口座が薄い」を繰り返している
- 銀行・投資家との対話が弱い:融資や調達の場面で、事業計画や数字の根拠をうまく語れず、不利な条件を飲んでしまう
これらはすべて、「数字で経営判断する機能」が欠けていることの表れです。経営者が勘と経験で乗り切れているうちは問題が見えませんが、成長局面や逆風のときに、その差は決定的になります。
外部CFO(CFO代行)とは
外部CFOとは、自社で常勤のCFOを雇う代わりに、必要な範囲・頻度で、外部の専門家にCFO機能を担ってもらう仕組みです。一般的には、次のような役割を引き受けます。
- 月次決算の早期化と、経営判断に使える数字の整備
- 管理会計・予実管理の運用(計画と実績の差を見て、打ち手につなげる)
- 資金繰り表の運用と、資金ショートの予防
- 金融機関・投資家との対話に向けた資料作成・戦略づくりの支援
- 月次経営会議への参加と、数字に基づく意思決定のサポート
自社に必要かどうかの判断基準
次のいずれかに当てはまるなら、CFO機能の導入を検討する価値があります。
- 経営者自身が、数字の管理や資金繰りに多くの時間を取られている
- 月次の数字が固まるのが遅く、意思決定が後手に回っている
- 融資・資金調達・補助金など、金融機関と向き合う局面が増えてきた
- 事業は伸びているのに、資金繰りが常に綱渡りになっている
- 管理会計(部門別・製品別の採算)が見えておらず、勘で経営している
費用感の考え方
常勤のCFOを正社員で採用する場合、それに見合う人材の人件費は、中小企業にとって決して軽い負担ではありません。さらに、採用そのものが難しく、ミスマッチのリスクもあります。
一方、外部CFO(CFO代行)は、必要な機能を、必要な範囲・頻度で利用でき、固定費を抑えられるのが利点です。「フルタイムのCFOは要らないが、CFO機能は欲しい」という多くの中小企業にとって、現実的な選択肢になります。具体的な費用は、依頼する業務範囲や関与の深さによって変わるため、まずは自社に必要な機能を整理したうえで相談するのが得策です。
判断すべきは「CFOを雇うか」ではなく、「CFO機能をどう確保するか」。雇用にこだわらなければ、選択肢は広がります。
4つの軸で、自社の必要度を採点する
CFO機能が要るかどうかは、印象で決めずに、負荷が発生している場所を分解して見ます。次の4軸を、それぞれ0点(該当なし)から3点(常時発生)で採点します。
- 資金調達の頻度:年に何回、借入・調達の局面があるか。3点は、返済と新規調達が常時並走している状態です
- 管理会計の要否:部門別・商品別・拠点別の採算を見ないと打ち手が決められないか。事業が単一なら低く、多角化・多拠点なら高くなります
- 金融機関対応の負荷:取引行数、提出資料の量、報告の頻度。行数が増えるほど、説明の一貫性を保つ手間が増えます
- 投資判断の頻度:設備・出店・採用・M&Aなど、回収期間を計算すべき意思決定が年に何件あるか
見るべきは合計点そのものより、どの軸が高いかです。調達と金融機関対応が高いなら必要なのは対外的な財務機能、管理会計と投資判断が高いなら必要なのは内部の意思決定支援機能で、求める人材も委託範囲も変わります。
内製と外部委託を、4つの物差しで比べる
比較をコストだけで行うと判断を誤ります。並べるべき物差しは4つです。
採用費 300万円 ÷ 想定在籍 3年 = 100万円
年間コスト = 1,250万円(月あたり 約104万円)
入れる数字は、自社の実数に置き換えてください。ここで大事なのは金額そのものではなく、採用費と立ち上がり期間を計算に入れているかです。この2項目を落とすと、内製が実際より安く見えます。
残る3つの物差しはこうです。立ち上がり速度は、採用に要する期間と、着任から成果が出るまでの期間の合計で見ます。専門性は、自社が今必要としている領域(調達・管理会計・再生・上場準備など)と、担い手の経験が重なっているかで見ます。1人の常勤者が全領域を高い水準で担えるとは限りません。継続性は、内製なら退職、外部なら担当者交代や契約終了のリスクです。どちらを選んでも、数字の作り方と資料の保管場所を自社側に残しておけば、担い手が変わっても運用は続きます。
業務範囲の切り分けと、成果の測り方
外部に任せるときは、工程を3つに分けて、どこを渡すかを文書にします。日次の記録(記帳・請求・支払)は社内または経理代行、意思決定の材料づくり(月次の整備、予実の分解、資金繰り予測、金融機関向け資料)は外部、そして決めることは経営者。この3層目を渡してしまうと、外部委託は機能しません。
資金繰り予測の誤差率 = 予測残高と実残高の差 ÷ 実残高
手元流動性(月数)= 手元現預金 ÷ 月次の平均支出
予実差異率 = 実績と計画の差 ÷ 計画
手元現預金 4,500万円 ÷ 月次平均支出 1,500万円 = 3.0ヶ月
着手前にこの4つを測っておき、半年後・1年後に同じ定義で測り直します。定義を途中で変えると比較にならないため、算出式は開始時に固定します。
成果が出るケース、出にくいケース
成果が出やすいのは、経営者に決める意思があり、一次データを出す担当が社内にいて、月次のリズムに委託先が組み込まれている場合です。逆に出にくいのは、丸投げで決裁が降りない、依頼した資料の元データが出てこない、期待が「調達が通ること」だけに置かれ、その手前の数字の整備が飛ばされている場合です。外部の機能は、社内の意思決定と接続されて初めて成果に変わります。
まとめ
CFO機能は、企業規模に関わらず必要なものです。専任で雇うのが難しい中小企業にとって、外部CFO(CFO代行)は、固定費を抑えながら「数字で経営判断する力」を手に入れる有効な手段です。まずは、自社にどの機能が足りていないのかを見極めることから始めましょう。
よくある質問
自社にCFO機能が必要か、整理しませんか。
「何が足りていないのか分からない」段階でも大丈夫です。
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