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資金調達

銀行が決算書のどこを見ているか:
融資に効く5つのポイント

2026.07.02
無料ツール 債務償還年数 計算ツール:銀行が見る返済能力を、自社の数字で確認できます このテーマの全体像 中小企業の資金調達ガイド:資金調達・融資を体系的にまとめた総合ガイド

同じような会社でも、融資が通る会社と通らない会社があります。その差は、しばしば決算書の見られ方にあります。銀行は決算書のどこを見ているのか。ポイントを知っておくと、日頃の経営や融資の準備が変わります。ここでは代表的な5つを解説します。

1. 返済力(利益とキャッシュフロー)

銀行が最も重視するのは、シンプルに「貸したお金を返せるか」です。利益が出ているか、本業から生まれるキャッシュ(営業キャッシュフロー)で、借入を無理なく返せる状態か。ここが融資判断の土台になります。

2. 自己資本(純資産)の厚み

純資産が厚い会社は、多少の赤字でも耐えられる体力があると見られます。逆に、純資産がマイナス(債務超過)だと、評価は大きく下がります。これまでの利益をどれだけ会社に残してきたかが、ここに表れます。

3. 資産の「質」

決算書に載っている資産が、本当に価値のあるものかも見られます。回収できない売掛金、売れない在庫、実態のない資産などが多いと、見た目の数字より会社は弱いと判断されます。資産は、額だけでなく中身が問われます。

4. 借入の状況とバランス

すでにどれだけ借りているか、その借入が会社の規模や利益に見合っているかも重要です。借入が過大でないか、返済が利益とバランスしているか。ここが崩れていると、追加の融資は慎重に見られます。

5. 数字の一貫性と説明できるか

決算書の数字が年ごとに大きくぶれていたり、内容を経営者が説明できなかったりすると、それ自体が不安材料になります。数字を自分の言葉で説明できることは、信頼につながります。良い数字を並べること以上に、実態を語れることが効きます。

決算書は、その場で作れない。日頃の経営が、そのまま数字に表れる。

日頃からできる備え

決算書をよく見せる近道はありません。できるのは、実態を良くしておくことです。利益をきちんと出す、回収できない資産を整理する、債務超過を避ける、借入を身の丈に合わせる。そして、自社の数字を説明できるようにしておく。これらは、融資のためだけでなく、経営そのものを強くします。

返済力を数字で測る:債務償還年数と営業キャッシュフロー

「返済できるか」は、感覚ではなく式で表せます。代表的な指標が債務償還年数です。

債務償還年数債務償還年数 = 有利子負債 ÷(税引後利益 + 減価償却費)

分母は、1年間に返済原資として生み出せる現金の概算です。減価償却費は現金が出ていかない費用なので、利益に足し戻します。有利子負債をこの返済原資で割ると、いまの収益力で全額を返すのに何年かかるかが出ます。この年数は短いほど返済余力があると見られます。なお、恒常的に必要な運転資金分を有利子負債から差し引いて見る考え方もあり、自社がどちらの前提で説明するかを整理しておくと対話がスムーズです。

あわせて見られるのが営業キャッシュフローです。利益が出ていても、売上債権や在庫が膨らんでいれば営業キャッシュフローはマイナスになりえます。

営業キャッシュフローの概算営業CF ≒ 税引後利益 + 減価償却費 − 運転資本の増加額
運転資本 = 売上債権 + 棚卸資産 − 仕入債務

利益と営業キャッシュフローが乖離しているとき、その差の中身(回収の遅れなのか、在庫の積み上がりなのか、成長に伴う先行投資なのか)を説明できるかどうかが問われます。

自己資本比率と、実態バランスシートへの引き直し

自己資本比率自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産

ただし、決算書の数字がそのまま使われるとは限りません。資産の中身を回収可能性・換価価値の観点で洗い直した実態バランスシートで評価されることがあります。代表的な調整項目は次のとおりです。

実態純資産実態純資産 = 帳簿上の純資産 − 資産の評価減 + 含み益 − 簿外債務

ここがマイナスであれば、帳簿上は黒字でも実質的に債務超過と判断されます。

数値例と、開示を整えるチェックリスト

仮の数字で引き直してみます(説明用の例です)。

この会社の場合 債務償還年数 = 3億円 ÷(2,000万円 + 3,000万円)= 6.0年
自己資本比率(帳簿)= 8,000万円 ÷ 5億円 = 16.0パーセント
実態純資産 = 8,000万円 −(1,500 + 1,000 + 500)万円 = 5,000万円
実態自己資本比率 = 5,000万円 ÷(5億円 − 3,000万円)= 約10.6パーセント

帳簿では16.0パーセントだった自己資本比率が、引き直すと約10.6パーセントになりました。差が生じること自体は珍しくありません。重要なのは、自社で先に引き直し、差の内訳を自分の言葉で説明できることです。

そのための準備として、次を整えておくと開示の質が上がります。

  1. 有利子負債の一覧(借入先・残高・約定返済額・金利・保全)を最新の状態にしておく
  2. 売掛金の年齢表(滞留期間別の内訳)と、滞留分の回収見込みを添える
  3. 在庫を滞留区分に分け、評価減の考え方を整理する
  4. 役員・関係会社との資金貸借や賃貸借は、金額と経緯を明示する
  5. 保証債務や係争など簿外の負担があれば、自分から先に開示する
  6. 前期から増減の大きい科目は、理由を1行で説明できるようにしておく
不利な数字を伏せるより、先に出して背景を語るほうが、結果として評価は安定します。

いずれも、決算書を良く見せるための工夫ではなく、実態を正確に伝えるための準備です。数字の悪さそのものより、説明のない空白のほうが不安材料になります。

まとめ

銀行は、返済力・自己資本・資産の質・借入バランス・数字の説明力を見ています。いずれも一夜漬けでは整えられず、日頃の経営が表れる部分です。融資に効く決算書は、良い経営の結果として生まれます。自社の決算書がどう見えるかを、一度点検してみませんか。

よくある質問

銀行は決算書のどこを一番見ますか?
返済できるかどうか、つまり返済力です。利益や営業キャッシュフローから、借入を無理なく返せる状態かを見ます。
赤字だと必ず融資は受けられませんか?
赤字それ自体より、原因と改善の見込みが見られます。一時的な赤字か、構造的な赤字かで評価は変わり、説明できる状態に整えておくことが大切です。
決算書をよく見せるために、日頃からできることは?
粉飾のような細工ではなく、利益をきちんと出す、余分な資産を整理する、債務超過を避ける、といった実態の改善です。日頃の経営そのものが、決算書に表れます。
執筆:株式会社diffferent
中堅・中小企業のための財務・経営コンサルティングファーム(大阪市北区)。経営改善計画の策定、事業計画の設計、月次のCFO代行、M&Aアドバイザリーまで、経営者が向き合う論点を継続伴走で支援しています。記事は、実務で用いる考え方をもとに執筆しています。

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