代表の齊藤が、社内のミーティングでこう言ったことがあります。「俺、このスタンスで変えたことないから。変えたことある? 記憶がないんだけど」。褒め言葉としてではなく、当たり前のこととして口にした一言でした。けれど私たちにとって、この一貫性は仕事の芯にあたる部分です。
基準が事実なら、答えは相手で変わらない
私たちは、数字と事実で判断することを最優先にしています。この立て方には、ひとつ大きな効用があります。基準が自分の外側にあるので、相手や場面によって答えが変わらないということです。
好き嫌いや、その場の空気や、誰が言ったかで結論が動く仕事は、一貫させようとしても無理があります。基準が自分の気分の中にあるからです。一方、「この会社にお金を貸せるのか、貸せないのか」「この計画は、いまのリソースで届く高さなのか」という問いに事実で答えるなら、答えは誰が聞いても同じになります。
一貫性は、意志の強さだけで保つものではありません。基準を事実に置くことで、構造的に保たれるものだと考えています。
昨日の自分と、今日の自分が矛盾しないか
仕事をしていると、前に自分が言ったことと、いま言おうとしていることが食い違う瞬間があります。多くの場合、そこには理由があります。新しい事実が出てきた、前提が変わった、そもそも前回が誤りだった。
大事なのは、その食い違いを放置しないことです。事実が変わったなら「前提が変わったので、結論も変えます」と言えばいい。誤りだったなら、そう言えばいい。避けたいのは、変わったことに触れないまま、なんとなく別のことを言い続ける状態です。
それをやってしまうと、相手はもう私たちの発言を判断材料にできなくなります。今日の意見が明日どうなるか分からない相手の言葉を、経営の意思決定に使う人はいません。
相手が誰でも、基準は同じ
私たちは、相手が社長でも、上司でも、年上の担当者でも、正しいと思うことは正しいと言います。齊藤は、これをこう表現しています。「1+1が3だと教えている先生がいたら、2でしょ、と言うでしょう」。コンサルとして入るのなら、その先生に対して2だと伝えないといけない、と。
ここでいう一貫性は、相手の立場によって結論を調整しないということです。決裁権を持つ人には言いにくい、長く付き合っている相手には言いにくい——その気持ちは分かります。ただ、相手によって言うことが変わるなら、私たちが外部から入っている意味がなくなります。
もちろん、伝え方は相手によって変えます。言い方を尽くし、相手のプライドを守り、角を立てずに核心を届ける努力は、むしろ人一倍します。変えるのは届け方であって、結論そのものではない。この線を引いておくことが、一貫性を守るということです。
相手によって結論を変えないから、私たちの意見は判断材料になる。誰にでも同じことを言うから、信じてもらえる。
都合が悪いときこそ、基準を曲げない
一貫性が試されるのは、自分たちにとって都合が悪いときです。
「この投資は、いまの数字では勧められません」と言えば、話が止まるかもしれない。「その計画は、現在地から届く高さではありません」と言えば、場の空気は重くなるかもしれない。それでも、数字がそう言っているなら、そう伝えます。
経営者が求めているのは、気持ちよく肯定してくれる相手ではなく、会社が生き残り、成長するために必要なことを言ってくれる相手だからです。イエスマンが増えるほど、経営の意思決定の質は落ちていきます。私たちが外の人間としてお金をいただいている理由は、まさにそこにあります。
一貫性は、時間をかけて効いてくる
私たちは、スポットではなく継続伴走を基本にしています。長く隣にいる仕事だからこそ、一貫性の価値は積み上がっていきます。
毎月、同じ基準で数字を見て、同じ基準で意見を言う。それを1年、2年と続けたとき、経営者の側に「この人たちは、こういうときにこう言う」という予測が生まれます。予測が立つ相手には、判断に迷った段階で相談できます。結論が出てからの報告ではなく、迷っている最中に呼んでもらえる——そこまで来て、はじめて経営の本丸に関われるようになります。
一貫性とは、信頼を別の言葉で言い換えたものだと思っています。
だから、自分の基準を言葉にしておく
ここまで読んで、「そこまで一貫していられるだろうか」と感じた方がいるかもしれません。私たちも、生まれつき一貫しているわけではありません。やっていることは、単純です。
どういう事実を見て、どういう理屈で、その結論に至ったのか。そのプロセスを言葉にして残しておく。そうすれば、次に同じ論点が来たときに、自分の基準を呼び出せます。基準が言葉になっていないと、その日の気分や相手の反応に引きずられます。逆に言葉になっていれば、変えるときも「前提のここが変わったから、結論をこう変える」と説明できます。
思考の過程を残すこと、認識合わせを数字でやること、丸投げせずに自分の意見を持つこと。私たちが日々こだわっている作法は、どれも最後は言うことを変えないための土台につながっています。
この芯に、共感できる人へ
相手によって意見を変えない、というのは、実のところ楽な生き方ではありません。言いにくいことを言う場面は確実に来ますし、その場で歓迎されないこともあります。
それでも、自分の言葉が誰かの意思決定に使われ、その会社が前に進んでいく——この手応えは、迎合からは生まれません。私たちは、そういう仕事をしたい人と一緒に働きたいと思っています。
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