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打ち手の前に、情報を揃える

2026.09.01

経営者から相談を受けると、頭のなかにはすぐ打ち手が浮かびます。資金が足りないなら調達を、赤字なら経費の見直しを、承継の相談なら譲渡の選択肢を。経験がある人ほど、この反応は速くなります。

私たちは、そこで一度止まります。まず情報を全部揃える。揃えた上で、具体的なソリューションが何なのかを考える。この順番を、仕事の作法として守っています。

解決策から入ると、外す

浮かんだ打ち手は、たいてい「よくあるパターン」に対する答えです。似た会社で効いた手であり、教科書に載っている手でもある。だから、もっともらしく聞こえます。

けれど、目の前の会社が本当にそのパターンなのかは、まだ確かめていません。資金が足りない理由は、売上の減少かもしれないし、回収サイトの変化かもしれないし、在庫の積み上がりかもしれない。原因が違えば、正しい打ち手はまったく別のものになります。

先に打ち手を決めてしまうと、その後に集める情報はその打ち手を正当化する材料になっていきます。都合の悪い事実は目に入りにくくなる。これが、いちばん危ない状態です。

まず、状況把握を終わらせる

だから最初にやるのは、状況把握です。何が起きているのか、いつからなのか、どの数字がどう動いたのか。事実を、解釈を挟まずに並べていきます。

決算書と試算表を並べる。資金の入りと出のタイミングを確認する。取引条件を聞く。組織のなかで誰が何を決めているのかを掴む。地味な作業ですが、ここを飛ばすと、そのあとの議論がすべて仮説の上に乗ってしまいます。

そして、揃っていない情報があれば「揃っていない」と認識したまま進めます。分からないことを、分かったつもりで埋めない。推測で穴を埋めた資料は、どこかで破綻します。

解決策を早く出すことより、状況を正しく掴むことのほうが、結果的に速い。

何を知りたいのかを、先に決める

とはいえ、情報を無制限に集めればいいわけではありません。集める前に決めるのは、そもそも何を判断したいのかということです。

たとえば金融機関は、突き詰めれば「この会社にお金を貸せるのか、貸せないのか」を知りたい。そう置いたとき、必要な材料は自然と絞られます。返済の原資はどこから生まれるのか。その原資は続くのか。担保や保証で何が補えるのか。

目的から逆算するから、集めるべき情報が決まり、集めなくていい情報も決まります。目的を決めずに集め始めると、量は増えるのに判断には近づかない。この違いは、仕事の速さにそのまま出ます。

聞きにくいことこそ、聞く

情報を揃えるうえで避けて通れないのが、聞きにくい質問です。本来はどこを目指しているのか。この数字はなぜこうなっているのか。この取引は、どういう経緯で始まったのか。

社内の人間には聞きづらいことが、外部の私たちには聞けます。むしろ、報酬をいただいて入っている以上、外の人間として、ちゃんと聞くのが役割だと考えています。遠慮して聞かずに進め、あとから前提が崩れるほうが、よほど失礼です。

もちろん、聞き方には配慮します。相手の立場と感情を考えたうえで、それでも核心には触れる。この両立が、私たちの仕事の難しさであり、面白さでもあります。

揃ってから考えると、打ち手は速い

この順番を守ると、遠回りに見えて、実際には速くなります。

状況が正確に掴めていれば、打ち手の選択肢は絞り込まれた状態で出てきます。経営者に提示したときの説得力も違います。「一般的にはこうです」ではなく、「御社はこうなっているので、こうすべきです」と言えるからです。そして何より、途中で前提が覆って作り直す、という手戻りが起きません。

逆に、思いつきの打ち手から入った仕事は、進むほど修正が増えます。最初の30分を惜しんで、あとの30時間を失う。私たちが順番にこだわるのは、精神論ではなく、そのほうが結果として速いからです。

この順番で、働きたい人へ

この作法は、経験の量とは関係ありません。入社してすぐの人でも、今日から実行できます。むしろ、知識が少ないうちのほうが、思い込みなく事実を集められるという強みもあります。

大事なのは、答えを急がないこと。分からないことを分からないまま持っておける胆力と、必要なら踏み込んで聞ける勇気。この2つがある人と、一緒に働きたいと考えています。

この順番で、仕事をしませんか。

事実を集め切ってから考える。経営者の隣で、その作法を実地で身につけられる環境があります。まずは話を聞くところからで構いません。

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