「うちの金利って、高いんでしょうか」。金融機関との面談のあとに、こう聞かれることがあります。答えようとして手が止まるのは、多くの会社で借入が1本ではないからです。設備資金、運転資金、制度融資。時期も条件もばらばらな借入が何本も並んでいて、そのどれを指して「うちの金利」と言えばいいのか、はっきりしません。
この状態を整理する道具が、加重平均金利です。何本もある借入を、残高で重みづけして1本の数字にまとめます。自社の借入コストを1本で言えるようになると、金融機関との対話も、借換えの判断も、格段にやりやすくなります。
金利は、1本ずつ見ても全体像が分からない
借入の条件表を眺めていると、どうしても金利のいちばん高い1本に目が行きます。しかしその借入の残高がすでに小さければ、会社全体の利息負担に与える影響は限られます。逆に、金利は低くても残高の大きい借入のほうが、支払っている金額としては大きいということが起こります。
ここでずれが生まれます。「金利の高さ」と「利息の重さ」は別の話だからです。前者は率、後者は金額です。会社の資金繰りに効いてくるのは後者ですから、率を見るときも金額に近い形に直しておく必要があります。それが、残高で重みづけするということです。
加重平均金利の式
分子は、各借入について「残高 × 金利」を計算して合計したものです。これは、いまの残高と金利がこのまま1年間続いたと仮定したときの、年間の利息額に相当します。それを残高の合計で割ると、会社全体を1本の借入と見立てたときの金利水準が出ます。
単純平均、つまり各借入の金利を足して本数で割る方法とは、意味が違います。単純平均では、残高100万円の借入と残高1億円の借入が同じ重みで扱われてしまいます。
数値例:3本の借入を1本の数字にまとめる
仮の会社で計算します(説明用の例です)。借入は3本あるとします。
- 借入A:残高 60,000,000円/金利 年1.2パーセント
- 借入B:残高 30,000,000円/金利 年1.8パーセント
- 借入C:残高 10,000,000円/金利 年2.6パーセント
B = 30,000,000円 × 1.8パーセント = 540,000円
C = 10,000,000円 × 2.6パーセント = 260,000円
合計 = 1,520,000円/残高合計 = 100,000,000円
加重平均金利 = 1,520,000円 ÷ 100,000,000円 = 年1.52パーセント
一方、単純平均で計算すると次のようになります。
0.35ポイントの開きが出ました。差が生まれたのは、金利のいちばん高い借入Cの残高が全体の1割しかないためです。この例のように残高の小さい借入の金利が高いと、単純平均では実際より重い負担を抱えているように見えます。逆に、残高の大きい借入の金利が高ければ、単純平均は負担を軽く見せることになります。
加重平均金利は、率の話を金額の重さに近づけて見るための道具です。だから、金融機関との条件の比較にも、社内の説明にもそのまま使えます。
支払利息から、実効金利を逆算する
もうひとつの見方があります。決算書に載っている支払利息の実額から、逆算する方法です。
期中平均借入残高 =(期首の借入残高 + 期末の借入残高)÷ 2
期中平均を使うのは、返済が進んで残高が年間を通じて減っていくためです。期末残高だけで割ると、実際より高い率が出ます。先ほどの会社で、期首の借入残高が100,000,000円、期末が88,000,000円、年間の支払利息が1,430,000円だったとします。
実効金利 = 1,430,000円 ÷ 94,000,000円 = 約1.52パーセント
条件表から積み上げた加重平均金利と、実績から逆算した実効金利。この2つが近い値であれば、借入の一覧が実態と合っているという確認になります。大きくずれた場合は、その理由を探します。一覧に載っていない借入がある、期中に実行や完済があって平均残高の前提が合わない、利息以外の費用が支払利息に含まれている、といった原因が考えられます。
金利差を、年間の金額に直す
金利の議論は、率のままだと大きさの感覚が掴めません。必ず金額に直します。
先ほどの会社が、借換えによって加重平均金利を年1.52パーセントから年1.25パーセントに下げられたとします。
年間の利息の差 = 100,000,000円 × 0.27パーセント = 270,000円
年間270,000円。これを大きいと見るか小さいと見るかは、会社の利益水準によります。ただし、この金額と借換えに伴って発生する費用や手間を並べて初めて、判断ができるようになります。金利が下がるという事実だけでは、有利かどうかは決まりません。
金利だけで、借入先は選べない
借入の条件は、金利だけではありません。実務では、次のような要素を合わせて比べます。
- 利息以外の費用:事務手数料、保証料など。金利に含まれない負担がどれだけあるか
- 返済期間と据置:期間が長いほど年間の返済額は軽くなりますが、支払う利息の総額は増える方向に働きます
- 担保と保証:不動産や預金の拘束、保証の付け方によって、次の借入余力が変わります
- 機動性:急に資金が必要になったときに、どれだけ早く動いてもらえるか
- 取引の継続性:業績が悪化した局面で、対話を続けられる関係かどうか
金利をわずかに下げるために、担保余力を使い切ったり、いざというときに相談できる先を失ったりするのでは、本末転倒です。金利は比較項目のひとつであって、目的ではありません。
年間の借入コストとして捉える
金利の比較でつまずきやすいのは、利息以外の費用を計算に入れずに並べてしまうことです。制度によっては保証料が別途かかりますし、実行時に手数料が発生する場合もあります。金利の低さだけで並べると、実際の負担順と逆になることがあります。
費用の水準は制度や取引によって異なりますので、提示された条件を都度確認し、金額に直して合算するのが確実です。
自社で確認する手順
- 借入金の明細と返済予定表を集め、借入先・当初金額・現在残高・金利・返済期限・保全の状況を一覧にする
- 各借入について「残高 × 金利」を計算し、合計を残高合計で割って加重平均金利を出す
- 決算書の支払利息と期首・期末の借入残高から、実効金利を逆算する
- 2と3の値を突き合わせ、差が大きければ一覧の漏れや前提のずれを確認する
- 加重平均金利を3期分並べ、上がっているのか下がっているのかを見る
- 条件の見直しを検討する場合は、金利差を年間の金額に直し、費用や条件の変化と並べて比較する
この一覧は、一度つくれば毎期の更新で済みます。金融機関との面談で借入の全体像を聞かれたときにも、そのまま提示できます。自社の借入を1枚で説明できること自体が、対話の質を上げます。
まとめ
借入が複数あると、自社の金利水準は感覚では掴めません。残高で重みづけした加重平均金利を出し、支払利息から逆算した実効金利と突き合わせる。この2つが揃えば、自社の借入コストを1本の数字で語れるようになります。
そのうえで、金利差は必ず年間の金額に直して評価すること。そして、金利以外の条件も含めて総合的に判断すること。金利を下げることが目的ではなく、会社の資金繰りと将来の調達余力を守ることが目的だからです。まずは借入の一覧をつくるところから始めてみてください。
よくある質問
自社の借入条件を、一度整理しませんか。
借入一覧の作成から、加重平均金利の算定、条件見直しの検討まで。
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