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収益性 / 管理会計

損益分岐点の考え方:
いくら売れば黒字かを知る

2026.07.16
無料ツール 損益分岐点 計算ツール:いくら売れば黒字か、自社の数字で出せます このテーマの全体像 数字で経営するガイド:事業計画・経営管理を体系的にまとめた総合ガイド

「あといくら売れば、赤字を抜け出せるのか」。この問いに数字で答えられるのが、損益分岐点です。難しい理論に見えて、考え方はシンプル。会社の費用を「固定費」と「変動費」に分けるだけで、黒字化の目安が見えてきます。経営の羅針盤になる基本の考え方です。

費用を2つに分ける

出発点は、費用を性質で2つに分けることです。

どちらに分類するかは業種や実態で変わりますが、まずはこの2つに大づかみで分けることが第一歩です。

「限界利益」で黒字化ラインを見る

売上から変動費を引いた残りを限界利益と呼びます。これは、固定費を回収し、利益を生み出す原資です。損益分岐点とは、限界利益が固定費とちょうど等しくなる売上高のこと。ここを超えれば黒字、下回れば赤字です。売上に対する限界利益の割合(限界利益率)が高いほど、少ない売上で固定費を回収できます。

赤字を抜け出す3つの打ち手

損益分岐点を下げる(=黒字化しやすくする)方向は、3つです。

一つだけでなく、組み合わせて取り組むほど効果は大きくなります。

損益分岐点が分かれば、値引きの限界も、固定費の重さも、数字で判断できるようになる。

固定費の重さを、意識する

損益分岐点の考え方は、固定費を増やす判断(正社員採用、新拠点、設備)の重みを教えてくれます。固定費が増えれば、黒字化に必要な売上も上がります。攻めの投資をするなら、その分だけ売上のハードルが上がることを、事前に数字で把握しておく。これが、無理のない拡大につながります。

式に落とし込む

ここまでの考え方は、3本の式にまとめられます。使うのはこれだけです。

基本の3式 限界利益率 =(売上高 − 変動費)÷ 売上高
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
目標利益を達成する売上高 =(固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率

3本目に注目してください。目標利益は、「もう一つの固定費」として足すだけで扱えます。「営業利益を1,000万円残したい」という目標が、そのまま必要売上高に翻訳できるということです。

余裕度を測る2つの指標

余裕度 損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高
安全余裕率 = 1 − 損益分岐点比率

安全余裕率は、売上が何パーセント落ちるまで黒字を保てるかを示します。同じ黒字額でも、この数字が薄い会社は、少しの売上減で赤字に転落します。黒字か赤字かだけでなく、この余裕度まで見ておきたいところです。

数値例で確かめる

実際に計算してみます(説明用の例です)。

この会社の場合 限界利益率 =(12,000 − 7,200)÷ 12,000 = 40パーセント
損益分岐点売上高 = 4,000 ÷ 40パーセント = 1億円
営業利益 = 12,000 × 40パーセント − 4,000 = 800万円
安全余裕率 = 1 −(10,000 ÷ 12,000)= 約16.7パーセント

この会社は、売上が約16.7パーセント減ると利益がゼロになります。では、営業利益を1,500万円まで伸ばすには、いくら売ればよいでしょうか。

目標利益から逆算する 必要売上高 =(4,000 + 1,500)÷ 40パーセント = 1億3,750万円(現状比 約14.6パーセント増)

「利益を倍近くにしたい」という願望が、「売上を約15パーセント伸ばす」という具体的な目標に変わりました。目標は、利益ではなく売上高で持つほうが動きやすいのです。

値引きの重さと、固変分解の手順

値引き1回の重さを計算する

先の会社の商品を、売価100・変動費60とします。ここで5パーセント値引きすると、限界利益はどう動くでしょうか。

5パーセント値引きの影響 値引き前の限界利益 = 100 − 60 = 40(限界利益率 40パーセント)
値引き後の限界利益 = 95 − 60 = 35(限界利益率 約36.8パーセント)
元の限界利益額を保つのに要る数量 = 40 ÷ 35 ≒ 1.14倍(約14パーセントの数量増)

価格を5パーセント下げただけで、約14パーセント多く売ってようやく元に戻ります。値引きの前に、この倍率を計算する習慣を持つだけで、安易な価格対応は減ります。

固定費と変動費に分ける手順

式の精度は、固変分解の精度で決まります。実務では次の順で進めます。

  1. 勘定科目ごとに、固定費か変動費かを仮置きする(材料費・仕入・外注費は変動、家賃・保険料は固定、が出発点)
  2. 月次で売上と各費用を横に並べ、売上と連動して動いている科目を変動費へ寄せる
  3. 水道光熱費など両方の性質を持つ科目は、最も売上が大きい月と小さい月の差額から、変動部分を切り出す
  4. 分解後の限界利益率を過去数期分並べ、大きくブレる年があれば分類を疑い、やり直す

使う前のチェックリスト

まとめ

損益分岐点は、費用を固定費と変動費に分け、限界利益で黒字化ラインを見る、という基本の考え方です。ここが見えると、値引きの限界も、固定費投資の重さも、数字で判断できます。「いくら売れば黒字か」を、感覚ではなく数字で押さえましょう。自社の損益分岐点、一緒に出してみませんか。

よくある質問

損益分岐点とは何ですか?
利益がちょうどゼロになる売上高のことです。これを上回れば黒字、下回れば赤字になります。「最低いくら売ればよいか」の目安になります。
固定費と変動費はどう違いますか?
固定費は売上に関わらずかかる費用(家賃・人件費など)、変動費は売上に応じて増減する費用(材料費・仕入など)です。分け方は業種や実態で変わります。
損益分岐点はどう下げられますか?
固定費を減らす、変動費率を下げる(原価改善)、値上げで限界利益率を上げる、の3方向です。組み合わせて取り組むのが基本です。
執筆:株式会社diffferent
中堅・中小企業のための財務・経営コンサルティングファーム(大阪市北区)。経営改善計画の策定、事業計画の設計、月次のCFO代行、M&Aアドバイザリーまで、経営者が向き合う論点を継続伴走で支援しています。記事は、実務で用いる考え方をもとに執筆しています。

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