diffferent
在庫 / 資金繰り

在庫はお金:
在庫管理が資金繰りを左右する理由

2026.07.15
無料ツール 運転資金 計算ツール:自社の数字を入れると、必要額とCCCが出ます このテーマの全体像 資金繰りを回す実務ガイド:資金繰りを体系的にまとめた総合ガイド

倉庫に整然と積まれた在庫を見ると、資産が積み上がっているようで安心するかもしれません。しかし、見方を変えれば、それは形を変えた現金が、倉庫で眠っている姿です。在庫の管理は、商品の管理であると同時に、資金繰りの管理そのものです。

在庫は、現金が姿を変えたもの

在庫は、仕入代金を支払って手に入れています。つまり、現金が在庫という形に変わっているのです。売れれば現金に戻りますが、売れない限り戻りません。在庫が増えるということは、それだけの現金が使えない状態になるということ。「利益は出ているのに現金がない」という会社の倉庫には、たいてい答えが積まれています。

在庫が生む、見えないコスト

在庫は、寝かせておくだけでもコストがかかります。

特に怖いのが陳腐化です。売れない在庫は、資産ではなく、処分待ちの損失になっていきます。

適正在庫は「日数」で考える

在庫の適正量は、金額だけでは判断できません。目安になるのは、いまの在庫が「何日分の販売量」に相当するかという見方です。売れ行きに対して在庫日数が長すぎる商品は、現金を余計に寝かせています。商品ごとに在庫日数を把握すると、どこに資金が滞留しているかが一目で見えてきます。

在庫を1日分減らすことは、その分の現金を生み出すことと同じだ。

減らすのは「動かない在庫」から

在庫削減というと、一律にモノを減らすことと誤解されがちですが、売れ筋を欠品させては本末転倒です。手をつけるべきは、動きの遅い在庫と死に筋。思い切って処分し、発注の仕組みを見直し、売れるものに在庫を寄せていく。在庫の「量」ではなく「中身」を入れ替える発想が、売上を守りながら資金を生みます。

在庫回転日数を、式で置く

「何日分の在庫を持っているか」は、感覚ではなく式で出せます。ここで大事なのは、分母に売上高ではなく売上原価を使うことです。棚卸資産は原価で計上されているため、売価ベースの売上高で割ると、在庫日数が実際より短く出てしまいます。

在庫回転日数 在庫回転日数 = 棚卸資産 ÷(年間売上原価 ÷ 365)
数値例(説明用の例です) 1日あたり売上原価 = 3億6,500万円 ÷ 365 = 100万円
在庫回転日数 = 6,000万円 ÷ 100万円 = 60日

この式の本当の使い道は、日数を出すことより逆算にあります。1日あたり売上原価が100万円の会社が在庫日数を60日から50日にできれば、棚卸資産は5,000万円になり、差の1,000万円が現金として戻ってきます。

在庫削減で戻る現金(説明用の例です) 戻る現金 = 1日あたり売上原価 × 短縮日数
100万円 × 10日 = 1,000万円

1,000万円を借りるには審査も利息も要りますが、在庫を10日分絞れば、同じ額が自社の中から出てきます。在庫の議論を「多い・少ない」から「何円の現金か」に置き換えると、優先順位は一気に決まります。

ABC分析:金額の大きい順に、管理を厚くする

全品目を同じ密度で管理することはできません。在庫金額の大きい順に並べ、上位から順に管理の手をかける。これがABC分析です。手順は単純です。

  1. 品目ごとに「単価 × 在庫数量」で在庫金額を出す
  2. 金額の大きい順に並べ替える
  3. 上から累計金額と、全体に対する累計構成比の列を足す
  4. 累計構成比のどこで区切るかを自社で決め、A・B・Cに分ける
  5. 区分ごとに、棚卸頻度・発注の見直し頻度・在庫日数の上限を変える
数値例(説明用の例です) A:8品目 4,200万円(累計構成比 70パーセント
B:12品目 1,200万円(累計 90パーセント
C:30品目 600万円(累計 100パーセント)
合計 50品目 6,000万円

区切りの位置に決まった正解はなく、品目数と管理にかけられる工数から自社で決めます。Aは毎月、Bは四半期、Cは年1回のように頻度を変えるだけで、同じ人員のまま管理の質は上がります。

さらに効くのが、金額と回転の二軸で見ることです。金額が大きく、かつ回転の遅い品目は、最も多くの現金を最も長く寝かせています。ここから手をつければ、触る品目数が少なくても、戻ってくる現金は大きくなります。

滞留在庫の見つけ方と、処分するかの判断

滞留在庫は、金額の大小では見つかりません。最終出荷日からの経過日数で並べ替えるのが早道です。あわせて、期首と期末で数量が1つも動いていない品目、入出庫の履歴が一定期間ゼロの品目を抜き出します。品目コードで在庫を管理していない場合は、まずそこを整えるのが先になります。

抜き出したあとの判断で迷いやすいのが、「高く仕入れたのだから簡単には捨てられない」という感覚です。しかし仕入代金はすでに払い終えています。判断はこれから動く現金だけで比べるのが筋です。

数値例(説明用の例です) 帳簿価額 300万円 / 処分で回収できる額 80万円 / 年間の保管費用 24万円
処分する:現金 プラス80万円、翌年以降の保管費 24万円が不要に
持ち続ける:現金 増減なし、保管費 マイナス24万円
1年で見た差 = 80万円 + 24万円 = 104万円

帳簿の上では、300万円と80万円の差である220万円が損失として表れます。それでも現金は104万円ぶん増えます。損失を計上したくないという理由で持ち続けると、損失は先送りされるだけで、現金だけが減り続けます。

発注方式を、数字で置き直す

滞留を処分しても、発注の仕方が同じなら、同じ在庫が数ヶ月後に戻ってきます。発注のタイミングは勘ではなく式で持ちます。

発注点(定量発注方式)/説明用の例です 発注点 = 1日あたり使用量 × 調達リードタイム + 安全在庫
20個 × 10日 + 100個 = 300個

使用量が安定した品目はこの方式が向き、季節変動の大きい品目は、発注の間隔を固定して都度数量を決める方式が向きます。式を見れば分かるとおり、調達リードタイムが短くなれば、必要な在庫も減ります。仕入先との納期交渉は、値引き交渉と同じだけ資金繰りに効く交渉です。

まとめ

在庫はお金です。在庫日数で現状を把握し、動かない在庫から整理し、発注の仕組みを整える。それだけで、借入に頼らず手元資金を厚くできることがあります。自社の倉庫に、どれだけの現金が眠っているのか。一度、数字で確かめてみませんか。

よくある質問

在庫が多いと、なぜ資金繰りが苦しくなるのですか?
在庫は仕入代金を支払って手に入れたものであり、売れるまで現金に戻らないためです。在庫が増えるほど、現金が倉庫に寝ている状態になります。
適正在庫はどう決めればいいですか?
欠品による機会損失と、過剰在庫による資金負担のバランスで決めます。商品ごとの売れ行きに応じて、保有日数の目安を設定するのが基本です。
在庫を減らすと売上が落ちませんか?
売れ筋の欠品は避ける必要があります。減らすべきは、動きの遅い在庫や死に筋です。全体を一律に減らすのではなく、中身を入れ替える発想が重要です。
執筆:株式会社diffferent
中堅・中小企業のための財務・経営コンサルティングファーム(大阪市北区)。経営改善計画の策定、事業計画の設計、月次のCFO代行、M&Aアドバイザリーまで、経営者が向き合う論点を継続伴走で支援しています。記事は、実務で用いる考え方をもとに執筆しています。

在庫と資金繰りの関係を、一緒に見える化しませんか。

在庫がどれだけ資金を寝かせているか、数字で確かめられます。
初回相談は無料です。現状をお聞かせください。

無料相談を予約する

まずは情報収集から、という方は 会社紹介資料をダウンロード(無料)

← ブログ一覧へ戻る