diffferent
事業計画 / 管理会計

売上計画の作り方:
逆算と積み上げを突き合わせる

2026.08.30
このテーマの全体像 数字で経営するガイド:事業計画・管理会計・KPIの基本を体系的にまとめた総合ガイド 無料ツール 損益分岐点 計算ツール:固定費と限界利益率から、いくら売れば黒字かを確認できます

来期の売上計画を作るとき、多くの会社が「今期の1.2倍」と置きます。理由を聞くと、「そのくらいは伸ばしたいから」と返ってきます。それは目標であって、計画ではありません。計画とは、その数字に到達する道筋が説明できる状態のことです。ここでは、逆算と積み上げという2つの作り方を突き合わせて、売上計画を検証可能なものにする手順を整理します。

売上計画には、2つの作り方がある

売上計画の作り方は、大きく2つに分かれます。

どちらか片方だけでは、計画になりません。逆算だけだと現場が達成できない数字が並び、積み上げだけだと会社として必要な水準に届いているかが分かりません。

この2つを別々に出して突き合わせ、差分を明らかにすること。その差分こそが、来期に取り組むべき打ち手です。

逆算:必要売上高を出す

逆算の起点は、固定費と目標利益です。損益分岐点の考え方をそのまま使います。

必要売上高 限界利益率 = (売上高 − 変動費) ÷ 売上高
必要売上高 = (固定費 + 目標営業利益) ÷ 限界利益率

変動費は、売上に比例して増える費用(仕入、外注費、販売手数料など)。固定費は、売上が動いても大きくは変わらない費用(人件費、地代家賃など)です。厳密な分類にこだわりすぎず、まずは主要な科目を振り分けるところから始めて構いません。

仮の会社で計算します(説明用の例です)。固定費1億2,000万円、限界利益率40パーセント、来期の目標営業利益2,000万円とします。

必要売上高の計算 必要売上高 = (120,000,000円 + 20,000,000円) ÷ 0.40 = 350,000,000円

参考:損益分岐点売上高 = 120,000,000円 ÷ 0.40 = 300,000,000円

この会社は、3億円を超えたところから利益が出はじめ、目標の2,000万円を確保するには3億5,000万円が必要、と読みます。ここまでが逆算です。

積み上げ:既存と新規に分ける

次に、現場の実態から積み上げます。ここでの原則は、既存顧客と新規顧客を必ず分けることです。全社の合計だけを1.2倍しても、何をすれば達成できるのかが分かりません。

積み上げの基本式 来期売上高 = 既存顧客売上 × 継続率 + 新規顧客数 × 新規1社あたり売上

同じ会社で続けます。今期の既存顧客からの売上が2億8,000万円、これまでの実績から継続率を90パーセントと置きます。

既存分の積み上げ 既存分 = 280,000,000円 × 0.90 = 252,000,000円

必要な新規売上 = 350,000,000円 − 252,000,000円 = 98,000,000円

新規1社あたりの初年度売上が400万円だとすると、必要な新規獲得数はこうなります。

必要な新規獲得数と商談数 必要な新規社数 = 98,000,000円 ÷ 4,000,000円 = 24.5 → 25社
受注率20パーセントの場合、必要商談数 = 25社 ÷ 0.20 = 125件
月あたり = 125件 ÷ 12ヶ月 = 約10.4件

ここで、売上計画が行動の計画に変わりました。「3億5,000万円を目指す」は動けませんが、「月に10件の商談を作る」なら動けます。これが積み上げをやる理由です。

突き合わせる:現状の力で、どこまで届くか

次が最も重要な工程です。いまの実力値のまま進んだら、いくらになるかを計算します。

この会社の直近の商談創出が、月5件だったとします。

現状の力で届く売上(成行の姿) 年間商談数 = 5件 × 12ヶ月 = 60件
受注数 = 60件 × 0.20 = 12件
新規売上 = 12件 × 4,000,000円 = 48,000,000円

来期売上高 = 252,000,000円 + 48,000,000円 = 300,000,000円
営業利益 = 300,000,000円 × 0.40 − 120,000,000円 = 0円

いまのやり方を続けた場合、ちょうど損益分岐点に着地します。目標との差は5,000万円です。この5,000万円が、来期に埋めるべきギャップとしてはっきりしました。

目標と成行の両方を出す。その差分が、来期の打ち手のリストになります。差分が見えていない計画は、努力目標にしかなりません。

ギャップを、4つのレバーで埋める

売上を動かせる箇所は限られています。それぞれを単独で効かせた場合の効果を計算してみます(いずれも成行の姿からの変化です)。

レバー1:継続率を上げる

継続率 90パーセント → 95パーセント 既存分 = 280,000,000円 × 0.95 = 266,000,000円
来期売上高 = 266,000,000円 + 48,000,000円 = 314,000,000円(+1,400万円)

レバー2:単価を上げる

新規1社あたり 400万円 → 450万円 新規売上 = 12件 × 4,500,000円 = 54,000,000円
来期売上高 = 252,000,000円 + 54,000,000円 = 306,000,000円(+600万円)

レバー3:商談数を増やす

月5件 → 月7件 年間商談数 = 7件 × 12ヶ月 = 84件、受注数 = 84件 × 0.20 = 16.8件
新規売上 = 16.8件 × 4,000,000円 = 67,200,000円
来期売上高 = 252,000,000円 + 67,200,000円 = 319,200,000円(+1,920万円)

レバー4:受注率を上げる

提案の型や見積の出し方を整えて受注率が動くなら、商談数を増やさずに受注数が増えます。ただし受注率は相手のある数字で、意図的に動かすのが最も難しいレバーでもあります。

そして、3つのレバーを同時に効かせた場合はこうなります。

レバー1・2・3を同時に実行した場合 既存分 = 280,000,000円 × 0.95 = 266,000,000円
新規分 = 16.8件 × 4,500,000円 = 75,600,000円
来期売上高 = 266,000,000円 + 75,600,000円 = 341,600,000円
営業利益 = 341,600,000円 × 0.40 − 120,000,000円 = 16,640,000円

3つすべてを実行しても、必要売上3億5,000万円には840万円届かず、営業利益も目標2,000万円に対して1,664万円にとどまります。

この結果を見て、「では固定費を見直すのか」「目標利益を現実的な水準に置き直すのか」「レバーをもう一段引き上げる算段があるのか」を議論する。これが計画づくりの本番です。数字を1.2倍に置いていたら、この議論には決してたどり着きません。

なお、複数のレバーを同時に動かす場合、それぞれの効果を単純に足し算しないでください。単価と件数のように掛け算の関係にある要素は、必ず式に戻して計算し直します。

月次に割り、予実で追える形にする

年間の計画が固まったら、月に割ります。ここで12等分してしまうと、季節性のある事業では毎月が未達になり、計画そのものが信用されなくなります。

  1. 過去2〜3期の月別売上構成比を出す
  2. その構成比を来期の計画に当てて、月別に配分する
  3. 特殊要因(大口案件、出店、キャンペーン)は構成比とは別に、金額を名指しで積む
  4. 売上だけでなく、商談数・受注数・単価・継続率も月別に置く
  5. 毎月、売上の差異が「件数のズレか、単価のズレか」まで分解できるようにしておく

ここまで作ると、計画は月次で検証できるようになります。3ヶ月連続で商談数が計画を下回っていれば、年度末を待たずに手を打てます。売上金額だけを追っていると、原因が分からないまま期末を迎えることになります。

作るときに外しやすい3つの点

まとめ

売上計画は、逆算と積み上げの両方を出し、突き合わせて初めて計画になります。逆算で「いくら必要か」を、積み上げで「いくら届くか」を出す。その差分を、継続率・単価・商談数・受注率という具体的なレバーに割り付ける。

この手順を踏むと、計画は「頑張ります」ではなく「月に何件の商談を作り、単価をいくらに置くか」という日々の行動に変わります。そして月次で追える形にしておけば、期の途中で軌道修正ができます。まずは、いまの実力値のまま進んだらいくらになるかを計算するところから始めてみてください。

よくある質問

逆算と積み上げの数字が合わない場合、どちらに寄せるべきですか?
どちらかに寄せるのではなく、差分を明らかにすることが目的です。差分を継続率・単価・商談数・受注率のどれで埋めるのかを決め、その打ち手が実行可能かを検討します。埋めきれない場合は、固定費の水準か目標利益そのものを見直す議論に移ります。
継続率は、どう計算すればよいですか?
顧客別の売上を2期分並べ、前期に取引のあった顧客が当期にいくら残ったかを金額ベースで見るのが実務的です。社数ベースでも計算できますが、大口顧客の離脱が金額に与える影響が見えにくくなるため、金額ベースと併用することをおすすめします。
年間の計画を月に割るとき、12等分ではいけませんか?
季節性のある事業では、12等分すると特定の月が構造的に未達となり、計画が信用されなくなります。過去2〜3期の月別構成比を使って配分し、大口案件や出店などの特殊要因は金額を名指しで別に積むほうが、予実の差異を読みやすくなります。
執筆:株式会社diffferent
中堅・中小企業のための財務・経営コンサルティングファーム(大阪市北区)。経営改善計画の策定、事業計画の設計、月次のCFO代行、M&Aアドバイザリーまで、経営者が向き合う論点を継続伴走で支援しています。記事は、実務で用いる考え方をもとに執筆しています。

来期の売上計画、根拠まで詰めませんか。

必要売上の逆算から、KPIへの分解と月次の予実運用まで。
初回相談は無料です。現状の計画をお持ちください。

無料相談を予約する

まずは情報収集から、という方は 会社紹介資料をダウンロード(無料)

← ブログ一覧へ戻る