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管理会計 / 予実管理

予実管理の実務:
差異を分解して、次の打ち手に変える

2026.08.28
このテーマの全体像 数字で経営するガイド:事業計画・管理会計・KPIを体系的にまとめた総合ガイド 無料ツール 損益分岐点 計算ツール:固定費と変動費から、必要な売上高を確認できます

予算を立てている会社は多くあります。しかし「予算と実績を並べた表は作っているが、そこから何をすればいいのか分からない」という声もよく聞きます。差を眺めるだけでは、経営は動きません。大切なのは、差異を分解して、原因の場所を特定し、打ち手に変えることです。ここでは、その実務の順序を整理します。

予実管理は「反省会」ではなく「早期警報」

予実管理の目的は、達成できなかった理由を問い詰めることではありません。年度の着地を早い段階で予測し、まだ打ち手が残っているうちに軌道を修正することです。

期末に「結果として届かなかった」と分かっても、できることは限られます。一方、上半期の途中で「このペースなら年間でどれだけ足りないか」が見えていれば、選べる手は多くなります。予実管理は過去を評価する仕組みではなく、未来を早く知るための仕組みだと考えると、運用の設計が変わります。

まず、符号と金額の大きさから入る

差異の見方は、シンプルな引き算から始まります。ただし、収益と費用では「プラスが良い」の向きが逆になるため、社内で表記を統一しておくと混乱しません。

差異の基本式収益の差異 = 実績 − 予算(プラス = 上振れ)
費用の差異 = 予算 − 実績(プラス = 使わずに済んだ)

そのうえで、金額の大きい順に並べ替えます。比率だけで見ると、小さな科目の大きな乖離に目を奪われます。まずは会社の利益に効いている順に、上位のいくつかへ視線を集中させます。

売上差異を、単価と数量に分ける

売上が予算に届かなかったとき、「値引きしたから」なのか「数が売れなかったから」なのかで、打ち手はまったく変わります。両者は分けて測れます。

売上差異の分解売上差異 = 単価差異 + 数量差異
単価差異 =(実績単価 − 予算単価)× 実績数量
数量差異 =(実績数量 − 予算数量)× 予算単価

単価差異がマイナスなら、値引きや構成比の変化を疑います。数量差異がマイナスなら、案件数・受注率・稼働といった営業側の指標に降りていきます。同じ「売上未達」でも、見るべき場所が違うということです。

数値例:売上は上振れ、でも利益は下振れ

仮の数字で分解してみます(説明用の例です)。

売上差異の内訳 売上差異 = 11,040,000円 − 10,000,000円 = プラス1,040,000円
単価差異 =(48,000円 − 50,000円)× 230個 = マイナス460,000円
数量差異 =(230個 − 200個)× 50,000円 = プラス1,500,000円
検算:マイナス460,000円 + プラス1,500,000円 = プラス1,040,000円

売上は予算を超えました。しかし内訳を見ると、単価を2,000円下げて、数量を伸ばしたという構造です。これが意図した戦略なのか、現場の判断で値引きが広がった結果なのかで、評価は正反対になります。

限界利益で見ると、打ち手が変わる

売上の増減だけでは、会社に残る利益は分かりません。変動費を差し引いた限界利益で見ます。ここでは変動費を1個あたり30,000円とします。

限界利益で見る 予算の限界利益 =(50,000円 − 30,000円)× 200個 = 4,000,000円
実績の限界利益 =(48,000円 − 30,000円)× 230個 = 4,140,000円
限界利益差異 = プラス140,000円
内訳:単価差異 マイナス460,000円 + 数量差異(230個 − 200個)×(50,000円 − 30,000円)= プラス600,000円

売上は1,040,000円も増えたのに、会社に残った限界利益は140,000円しか増えていません。値引き分は、そのまま利益から差し引かれるからです。売上の伸びを喜ぶ前に、この一段を見る習慣が要ります。

固定費差異まで通して、営業利益につなぐ

最後に固定費を重ねると、営業利益の差異まで一本でつながります。固定費の予算を3,500,000円、実績を3,650,000円とします。

営業利益差異 営業利益差異 = 限界利益差異 −(固定費の実績 − 固定費の予算)
= プラス140,000円 − 150,000円 = マイナス10,000円
検算:予算の営業利益 500,000円 / 実績の営業利益 490,000円 / 差 マイナス10,000円

売上は上振れ、限界利益も上振れ、それでも営業利益は下振れました。この一本の線が引けると、経営会議の議論は「売れたか売れなかったか」から、「どこで利益が漏れたか」へ移ります。

売上の差異だけを追いかけると、値引きで数量を積んだ月を「好調」と読み違えます。

差異を打ち手に変える運用手順

  1. 月次決算を締める日を固定し、締まった直後に差異を確認する
  2. 金額の大きい上位から、売上は単価と数量に、費用は変動費と固定費に分ける
  3. 差異ごとに「一時的な要因か、構造的な要因か」を分類する
  4. 構造的な要因には、責任者と期限を付けた打ち手を1つ決める
  5. 年間の着地見込みを更新し、残り月で取り戻せる範囲かを確認する
  6. 取り戻せない場合は、予算の未達を前提に資金繰りへの影響を先に見る

特に5と6が抜けがちです。差異分析は、最終的に年間の着地と資金繰りにつながって初めて経営判断の材料になります。

予算そのものの精度を上げる

毎月大きくずれる場合、実行側ではなく予算側に原因があることもあります。次の点を点検してみてください。

予算は当てるためのものではなく、ズレたときに原因をたどれる構造であることが重要です。単価と数量に分けて置いておくだけで、差異の分解は格段に楽になります。

まとめ

予実管理は、差を並べる作業ではありません。売上差異を単価と数量に分け、限界利益と固定費を通して営業利益差異までつなぐ。そのうえで、一時的な要因と構造的な要因を分け、年間の着地と資金繰りに接続する。ここまでやって、はじめて数字が打ち手に変わります。自社の予実表が、その構造になっているか点検してみませんか。

よくある質問

予実管理はどのくらいの頻度で行うべきですか?
月次が基本です。差異は早く気づくほど打ち手の選択肢が残ります。月次決算を締める日を決め、締まった直後に差異を確認する流れを固定すると続きます。
どのくらいの差異から追いかければよいですか?
金額と比率の両面で自社の基準を決め、影響の大きいものから見ます。すべての科目を同じ深さで追うと運用が重くなり、続かなくなります。
毎月、予算と実績が大きくずれてしまいます。
実行側だけでなく、予算の作り方に原因があることもあります。積み上げの根拠、前提条件、季節性の反映を点検し、必要なら期中で見直しの手続きを設けます。
執筆:株式会社diffferent
中堅・中小企業のための財務・経営コンサルティングファーム(大阪市北区)。経営改善計画の策定、事業計画の設計、月次のCFO代行、M&Aアドバイザリーまで、経営者が向き合う論点を継続伴走で支援しています。記事は、実務で用いる考え方をもとに執筆しています。

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